届くまで何度でも

9/11

36人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
それから桃花さんは少しずつ近づいてきて。 あたしはなんとか涙を止めようと、目元を袖で拭ったら。 「鈴羽。」 呼ばれて、腕を捕まれた。 力強いのに、少しも痛くない。 「好きだ。」 「は…ぃ…。」 「大好きだ。」 「あた…しも…大…好きっ!」 「今まで剣道しかやってこなった自分だが…鈴羽、恋人になってくれるか?」 「勿論!あたしは桃花さんがいいの!」 「抱き締めてもいいだろうか?」 抱き締めてほしい。 でも言葉で言うのは恥ずかしいから頷いた。 するとふわりと包まれる。 優しくて、遠慮がちの包容。 いつも悲しいときは抱き付いた。 少しでも意識して欲しくて抱き付いたこともある。 その時だって抱き返してくれたけど、やっぱり家族の包容だった。 でも。 「やっと……届いた……。」 もう一度言う。 ずっとずっと願っていたばかりで、届かなくて。 諦めかけてたこともあったけど、ようやく届いたあたしの恋。 「あぁ、待たせてすまない。」
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

36人が本棚に入れています
本棚に追加