第六章 振り出しに戻った僕たちは今度こそ理想の国造りができるのか?

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ミニオロチの首から流れ出た汚れの無い血は、瞬く間に辺りを深紅に染めて、物凄いスピードで果てしなく広がっていく。 蜷局を巻いて、天に昇っていくとも地底に吸い込まれていくとも分からず、あらゆるものを呑み込んでいく。  地割れから噴き出していた炎と溶岩も深紅の渦巻きに刈り取られ、荒れ狂っていた小鬼神の怒りも鎮められたかに見える。  安堵の溜め息をついたのも束の間、遺跡から発掘された『かみ』が次々に巻き上げられ、白い紙面が無残にも赤黒く染められていく。  僕たちは一斉に駆け出して『かみ』を守ろうとしたのだが、『かみ』は鋭い薄刃となって襲い掛かってきた。一瞬で僕たちは傷だらけになり『かみ』に近付けなくなる。真っ赤な竜巻に吸収されていく『かみ』を僕たちは黙って眺めているしかなかったのだ。  足の裏が地面から離れたのを感じた。僕の身体も赤い渦の中で浮いている。何が起きているのか見当もつかないが、またしても失敗したということは身を切り刻まれるほど痛烈に思い知らされた。それは僕だけでなく、なぎさや亀足や白木や紫園も同じことを痛感しているようだった。 「またかよ」と白木が絶望的な顔で唸る。 「どうやったって駄目なんじゃないか?」紫園も吐き捨てるように言う。  僕たちは完全に希望を失っていた。 「どうせ神々に人を見る目なんてないのよ」  なぎさの言葉こそが真実ではないかと僕も思った。 「そうだね。僕たちのこと、買い被っているんだよ、きっと」 「買い被られて、こんなことを永遠に繰り返すなんて。最低」  本当に最低だ。何度も何度も生まれ変わり、いつも同じ、最弱の僕で、いつも同じ、愛すべき仲間と再会し、今度こそ、となけなしの希望を胸に頑張って、打ちのめされ、絶望して、そんなことをヤマタケ先輩の勘違いで永遠に続けるなんて、最低以外の言葉が見つけられない。  そんな憤りも、悲しいかな、少しずつ薄れていく。  また何もかもが消え去って、僕たちは一から始めなければならないのだ。そう予感しただけで、身体が干上がってしまったかのように窮屈で苦しかった。 (続編『或る日とつぜんヒトになった僕神の・・・・』に続く)
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