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彼女に別れを告げてからも毎日は淡々と過ぎて行く。
少しだけ、色を失い味気のない日々。それでも仕事はあるし同期や先輩と飲みに行く日々は変わらない。
彼女とは頻回ではないが仕事では関わる。それは同じ病棟にいる以上避けては通れないことだった。彼女はわりとあっさりしていて、何もなかったように端的に依頼をしてくる。
そんなものか、と少し落ち込むおれはやっぱり情けなく最低だった。
飲んだあと彼女と帰るようになったのはいつからだったか。彼女がまだ1年目だったころを思い出す。
初めはほんの軽い気持ちで、かわいい子いるな、くらいの感覚だった。職場ではあっさりしているけれど、飲みに行くとよく話しよく食べてよく笑う、そんな彼女に少し興味が湧いた。なんとなくうまく2人になって、持ち帰ってみたのがきっかけだった。
自分言うのもなんだが、昔から女に困ることはなくて、来るもの拒まず去る者追わずのスタンスで、自分からいったのは久々だったように思う。
「なに、ひとりで飯?」
「ん?あ、よう。」
「さみしいなあ、お前。」
「うるさいよ。」
食堂で会った同期に笑われながら、おれは目の前にある定食に箸をつけた。
なんとなく視線を感じて顔をあげる。なに?と小首をかしげると、同期は少し困った表情を見せた。
なんとなく、わかる。なにを聞きたいのか、言いたいのか。それでもおれは知らぬふりをする。これは、彼女とおれの問題で、誰かを巻き込むことではない。
きっとコイツはそれをわかっていて、言いたいはずの言葉を飲み込み、今日病棟どう?なんて当たり障りのないことを聞いてきた。
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