4.昼のうつつ 夜の『夢』

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 やがてハツキも彼らに声をかけることは諦め、ただ観察するだけになった。  そうやって観察をするようになって解った。  彼らは『夢』に現れてすぐは個人個人ふらふらとめいめいの動きをしているだけなのだが、やがて皆、何かに気づいたように同じ方向に足を向け始める。  多くの者はたどたどしい歩みで、その方向に向かい行く。  だが中には、『夢』の大地に現れてすぐに、その方向へ走り出す者もいた。  また逆に、現れた場所にじっとたたずみ、一歩も動こうとしない者もいた。  その、ある一方向に向かっていく者達は、進むうちに徐々に姿が薄くなり、やがてかき消すように『夢』の大地からは消えてしまう。  しかし動かない者達はいつまでも姿を消すことなく、自分達が現れた場所に立ち尽くしたままだった。  起伏も殆どなく特徴に乏しい景色だけでは判断が出来なかったが、そのように動かない者達のおかげで、ハツキは眠りにつくたびに自分が『夢』の中の大地のほぼ同じ場所に現れていることが解るようになっていた。  前回ヴィレドコーリを訪れた時には、自分では意識していなかったが、初めてベーヌから出たことや受験ということで気負っていたのか、ヴィレドコーリの祖父の屋敷で『夢』を見ることはなかった。  ベーヌの自宅以外の場所で『夢』を見たのは昨晩が初めてだった。
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