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「はは。おまえならきっと大丈夫だろう」
新しく持って来たシードルの栓を開けて自分達のグラスに注ぎ分けながら、サネアキがサホの宣言を笑って請け合った。
アリタダがサホのことを勉強が得意なチグサと言った通り、サホも高校での成績は上位に位置し、国内最難関と言われる王立学院大学への入学も決して夢物語ではない。
そしてハツキは、今春その王立学院大学への進学を決め、今こうしてヴィレドコーリに向かう汽車の中にいる。
アリタダはグラスの中身の半分ほどをくいと飲んで、また息をついた。
「そんな両方のチグサが協力して、ヤウデンからルクウンジュに持って来た木を改良して育て上げ、うちの自慢の林檎にしたんだ。俺はルクウンジュだけでなく、ヤウデンにもうちの林檎に適うものはないと信じているからな。そしておまえ達も、姉さん二人も全員、そのチグサの自慢の子供達だ」
最後の言葉をアリタダはハツキに目を合わせながら言い切った。
母親の願いと同じように、ハツキは父の思いも知っていた。その思いを込めて父が自分の名前をつけてくれたことも知っている。
だから父に向けて、それ以外の全てを飲み込んでゆったりと微笑んだ。
そうする以外の解をハツキは持っていなかった。
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