2.街の煌めき遠く溢れ

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2.街の煌めき遠く溢れ

 汽車から降りると、ホームでは見知った顔が出迎えに来ていた。  人混みの中、彼がハツキ達の顔を見つけ、その美貌を綻ばせ気安く手を上げて近づいてくる。その向こうでは、彼の護衛の者が駅員達に荷物を運ぶように指示を出していた。  彼は傍まで来ると、ふわりとハツキを抱き締めキスをしてきた。  久しぶりの心癒やす感触にハツキも相手の背に腕を回す。  ほのかに香る彼の香水が鼻腔をくすぐった 「ハツキ。ヴィレドコーリへようこそ。また一緒に暮らすことが出来るな」  彼がハツキから唇を離し、挨拶の言葉をかけて腕を緩める。ハツキも少し身体を離すと、彼の黄海松茶(きみるちや)色の瞳を覗き込んで微笑した。 「うん、ユキ兄。今日からまた、よろしくお願いするね」  ハツキの返答に微笑しながら頷くと、カザハヤ・サネユキは顔を上げて、ハツキの後ろにいるアリタダ達にも笑顔を見せた。 「叔父様とサホもようこそ。ベーヌからの長旅お疲れ様でした」 「いやいや、サネユキ君もわざわざ出迎えに来てくれてありがとう。嬉しいよ」 「おい、ユキ。俺には何もなしか?」  他の人間にはにこやかに挨拶をするのに、自分には一言もない三つ年下の弟にサネアキが苦情を言う。そんな兄に向かって、サネユキはふんと自信ありげな笑みを浮かべた。 「ハツキがヴィレドコーリに来るんだ。アキはお供でついてきて当然だろう?」
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