2.街の煌めき遠く溢れ

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「おまえなあ……俺だって、美人の弟から温かく出迎えられたいぞ」 「よく言う」  兄の軽口に憎まれ口で返す。  弟の返答にサネアキが苦笑する。そうしながらサネユキに軽く拳を突き出した。兄の動きに合わせてサネユキもハツキから離した手で拳を作る。そして快活に笑いながら兄のそれと合わせて兄弟同士の挨拶をした。  ホームでの挨拶を済ませると、ハツキ達はサネユキの護衛の案内でカザハヤからの迎えの車に乗った。そして夕方の混雑時で人が溢れるヴィレドクルワーゼ駅を速やかに後にしたのだった。  乗り込んだ車の中で、サホは大きく溜息をついて座席の背に凭れかかった。  その理由を察してサネアキ、サネユキの兄弟が笑う。  この兄弟は基本的な顔の造作は似ているのに、持っている雰囲気はまるで違った。  兄のサネアキは男性的で精悍な印象を見る人に与える。対して弟のサネユキは、女性的とまでは言わないものの兄に比べると柔らかな美しさが際立っていた。  笑う表情にも二人の違いが良く表れている。  そして、サネアキは高校と大学はヴィレドコーリの学校に通い、サネユキに至っては高校入学時にこちらに出てきてからずっとヴィレドコーリの暮らしであるので、二人ともこの街によく慣れているのだった。 「ベーヌとは違うだろう?」  サネユキが笑い混じりに訊くと、サホは再度大きく息をついた。 「びっくりした。遠くから見た時は、きらきら光って綺麗だなって思っただけだったけれど……街に入ると光が溢れてて眩しくて。それに人もとても多くって目が回りそう。……兄様、本当に大丈夫?」
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