2.街の煌めき遠く溢れ

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 心配なんていらないのに。そう思ったハツキの心中に気づいてのことかは解らない。だが、サホの言葉にサネアキが笑った。 「サホ。こっちにはユキがいるんだ。ハツキが困る訳はないだろう? それより、おまえだって来年は王立学院大学に進学したいと意気込んでいたのに、王都に来ただけでそれじゃどうする」  サネアキからかけられた発破に、サホはすぐに反応した。勢いよく背を起こし、拳を握って気合いをいれるように息を吐き出す。  妹の素直な様子に、車内の人間が笑った。  ハツキも皆と一緒に小さく微笑を浮かべてから、窓の外に目をやった。  街灯や繁華街のイルミネーションが煌びやかに光る。  ハツキにとってこの街の明るさは好ましい。  また、人の多さに多少辟易するものはあったとしても、この街の人々の関心は自分に向いてこない。ベーヌとは違うそのことこそが、ハツキには何よりも嬉しいものだった。  ヴィレドコーリの中心地区の一つである、地方からの汽車の終着駅となる王都の一大ターミナル、ヴィレドクルワーゼ駅。その駅のある五区を抜け、隣接する十五区に入ると人や車の数はぐっと減る。  その十五区も過ぎ、カザハヤの王都屋敷のある十六区に入ると、道路は更に閑散としてきた。規則正しく並ぶ街灯が照らす大通りの道路を、車は目的地に向けて走って行く。
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