2.街の煌めき遠く溢れ

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 ベーヌの領主であるカザハヤ公爵家の王都ヴィレドコーリでの屋敷は敷地も広大だ。  門に立つ守衛に礼をされながら、大通りに面した正門から敷地に入る。  正門から屋敷の正面玄関までの道を庭園等がぼんやりと照らす。しかしその明るさだけでは、広大な敷地の全てを到底照らし出せない。道の右側に鬱蒼と茂る広葉樹の林も、左側に広がる芝生と花壇の庭園も、春の夕闇の暗がりに覆われていた。  車内からは、左手の奥、敷地内で最も高い位置に立っている王都屋敷の窓から明かりが漏れ出しているのが見えた。    敷地の一番西寄りにある正門から、庭園を抜ける道は東の方向へ傾斜を上がり、一旦屋敷よりも東側に抜けてから大きく北へ曲がった。その先に屋敷の正面玄関がある。  玄関前には、ハツキ達の車を待つ人達の姿が見えた。 「まったく。気が早いというか……」  彼らの姿に気づいてサネアキが苦笑を洩らす。そんな兄にサネユキも肩をすくめて答えた。 「それは言いっこなしだ。アキだって、無事ハツキの進学が決まってから、お祖父様達がどれだけ首を長くして待っていたのか知っているだろう?」  しかし、サネアキは玄関先を指さしながら弟に言い返した。 「それは解っているけれどな。あれじゃお祖父様だけでなく、親父殿も俺達がこちらへ進学を決めた時よりも喜んでいるのが丸解りじゃないか」
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