2.街の煌めき遠く溢れ

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「俺達が高校からこちらの学校に通うのは、決まっていたことだ。ハツキとは一緒に出来ないだろう。それにお祖父様もお父様もハツキが可愛くて仕方がないのだから」 「可愛がっている筆頭は間違いなくおまえだけどな」  兄の皮肉にもサネユキは平然と笑って返す。 「当然だろう?」    カザハヤ兄弟の会話にサホが口許を押さえながらくすくすと笑った。  けれどハツキは、何ともいたたまれない気分になって、一人顔を俯かせた。  サネユキや祖父からと同様に、伯父の好意も有難いことではある。  しかし、ただの甥に対するには行き過ぎだろうと感じることもしばしばあり、そんな時はどう対応したらいいのだろうと悩むことになるのだ。  その過剰なまでの好意。それがハツキが生まれ持ったものや、それによって起こった出来事によるものに起因するという事実を否定することは決して出来ない。  決してそれは伯父の好意の理由の全てではない。しかし要因の一つであることに間違いはないからだ。  ハツキも、サネユキや家族、祖父母同様に、母の兄であるカザハヤの伯父に親愛の念を抱いている。  それでも伯父からの好意に対しては、複雑な気分になってしまうのだった。
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