3.ルクウンジュ国

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 しかし、このルクウンジュ国内でも、東部山岳地帯の盆地に位置するベーヌ地方では、いささか特殊な人種構成及び宗教となっていた。  ルクウンジュは険しい地理に阻まれ、また半島のつけ根を挟んだ隣国エィラームとは宗教上の対立があったため、陸上での他国との交流は活発ではなかった。  代わりに三方を占める海に向けての海上貿易が盛んであり、古来より遠く他大陸まで船を送って、人や物の行き来が行われていた。  その中でも、セーリニア大陸の南東クィールム洋を渡り、赤道も越えた先にあるヨーデア大陸に位置するヤウデン国とは、数百年の昔から有効な関係を保ち続けていた。文化の違い等はあるものの、人種的な気風が互いに合ったためであろう。  ヤウデン国は現在でもルクウンジュ最大の貿易相手国である。  そのヤウデン国において三〇〇年程前、内乱が勃発し、最終的な終息をみるまでに十年以上各地で戦乱が続いた期間があった。その時代に、ヤウデンでの戦乱を逃れるため、またルクウンジュにはないヤウデンの技術をもってルクウンジュの発展に寄与するためにこの国へやって来た一団がいた。
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