3.ルクウンジュ国

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 ヤウデンとの貿易港の一つを有する大貴族、ヴァロワール領主メルシエ公爵の口添えによって、技術移民としてやって来た彼らに、当時の国王はベーヌの地を与え、ベーヌを実り多き土地にするように命じたのだった。  その頃のベーヌは、狩猟を主とするラティルト系山岳民が住まう、農業については発展の遅れたルクウンジュ内でも貧しい地方であった。  ヤウデンからルクウンジュに渡ってきた一団は、ヤウデンの優れた灌漑技術と、またヤウデン原産でベーヌのような冬の寒さが厳しい寒冷な高地でも育つような植物の苗木をもってベーヌを実り豊かな土地にすることを期待されたのである。  彼らはメルシエの領地である北部ヴァロワールの港から、プリヴァ河を上ってベーヌに入った。  一団を率いるカザハヤ。ヤウデン国教天之神道(あめのしんとう)の神職の家系であり、新しい土地で不安を持つ人心を宥める役目を持ったハギワラ。農業に詳しく、ベーヌの農業発展に直接的に寄与したチグサ。治水事業の指揮をとったノミヤ。  そんな技術を持つ氏族を中心とし、元よりベーヌに住まう山岳ラティルトとも協力しながら土地を開墾し、作物を植えていった。 298607f6-5b82-470a-97c0-3a9ce47f377d
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