3.ルクウンジュ国

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 そしてルクウンジュ国王の期待通りにベーヌを豊かな土地にしたのだった。  その功績が認められて、カザハヤは国王よりベーヌの領主権を与えられ、更にルクウンジュ貴族に叙され現在に至っている。  そのベーヌにおいては、移民の初期の段階から、旧来の山岳ラティルトとヤウデンからの移民との間の融和が積極的に行われていた。  そのためヤウデン国からの移民の末裔とは言え、現在ではその氏名の特徴にのみ名残を残し、外見は山岳ラティルトとほぼ同じになっている者が多数である。  だが、ルクウンジュの他の地方とはダインリューの険しい山々に隔てられていることもあって、ヤウデン人の特徴を残している者の比率もまた、国内他地方に比べて高かった。  中でも、カザハヤをはじめとする移民を率いてきた氏族のいくつかは、移民以来の数百年、ラティルトとの混血は一切行わず、今日でもヤウデンの血をそのまま残していることが知られている。  人種としてのヤウデン人はラティルト人と比較して骨格は細く小さく、肌は黄褐色を帯び、顔立ちの彫りが浅い。また頭髪の色も、多種多様なラティルト人とは異なり黒からせいぜい焦茶、瞳の色も茶色から暗い褐色であるのが特徴だった。
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