3.ルクウンジュ国

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 ベーヌの交通の便に関しては、古くはヤウデンからの移民達がとったようにプリヴァ河を使う方法が主流であった。  ベーヌから王都ヴィレドコーリへの行程も、ベーヌからヴァロワール地方・サンヒナ湾に注ぎ込むプリヴァ河を下り、そこから海に出て、西に突きだしたチュール半島を回って南下し、イズネー湾に流れ込むクルーヌ河の河口から河を上るという船を使ったものが一般的だった。  ベーヌから西方、王都方面に向けて広がるダインリュー山脈を越える街道も存在していたが、こちらは険しい山の中を行くために難所が多く、貨物の運搬に適さないばかりか、毎年山越えの事故が絶えない道だったのである。  ヤウデン人がヤウデンから持ち込み、ベーヌの特産とした林檎及びその加工品であるブランデーやシードル、また同じく持ち込んで生育に成功した漆を使った工芸品などは海路によってヴィレドコーリに運ばれ、王都においても高く評価されるものであった。  しかし海路は大変な大回りとなり日数も要するため、ダインリュー山脈を越える鉄道の開通がベーヌの住民からは長く望まれていた。  先代ベーヌ領主カザハヤ・サネシゲの尽力もあり、ベーヌ・ヴィレドコーリ間の鉄道が開通して十余年。  正歴一八一九年の現在。ベーヌ・ヴィレドコーリ間の人や物の流れは本格的なものなってきていた。
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