4.昼のうつつ 夜の『夢』

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 王立学院も国内の他の学校と同じく春休みに入っているので、構内に入ってからも学生の数は少なかった。文学部研究棟の中は更に閑散とした雰囲気だ。  人気ない階段を上る三人の足音が石造りの建物の中に響く。  目指すグィノー教授の研究室は研究棟の四階だった。  階段から部屋までの廊下の窓からは建物の周囲の植樹を見下ろすことが出来た。  建物のすぐ傍の木々は、冬の間落葉するいろは紅葉のようだった。  ベーヌでは未だ芽が固いものが、ここではもう縁を朱色で彩る明るい黄緑色の若葉が芽吹いているのが見て取れた。またいろは紅葉の並木からそのまま続いている構内の緑地には、見事に茂る常緑樹が多く植えられ、春の午前中の日差しに緑の葉が柔らかく輝いていた。  大学部には様々な学部があるので当然といえば当然なのだが、入学試験の時に感じたようにここの敷地は広いのだと再度思う。  これだけの広さがあるのならば、自分以外のベーヌ出身の学生に会わなくて済むだろうか。淡い期待を持つ。
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