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「彼は私の研究室に所属する大学院生のボードリエ・アルノー。来学期からはチグサ君の先輩になります」
グィノーから紹介を受け、祖父と父親がボードリエに挨拶をする。
その後ろでハツキも彼に会釈をすると、ボードリエは少し目を見張り、それから再度笑った。
「ようこそチグサ君。先生からお話を伺っていたし、君のレポートも読ませてもらって、会えるのを楽しみにしていたんだ」
「……ありがとう、ございます」
頭では、ここはもうベーヌではなくヴィレドコーリであることは理解していた。
けれど実際に、今日初めて出会った赤の他人のボードリエから何の気負いもない言葉をかけられ、最初に感じたのは困惑だった。
果たしてここにいられる間に、こんな違和感を感じなくなる時は来るのだろうか。
そう思いながらハツキはボードリエへもう一度頭を下げた。
「ボードリエ、お客様に珈琲をお出ししてくれるか」
「はい、先生」
グィノーに頼まれ、ボードリエは手にしていた本を傍の机の上に置くと、部屋の隅の小さな流しに行って珈琲の用意を始めた。
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