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実力だと言われても、誇りを抱くほど何をした訳でもない。
最終的に王立学院大学の受験を決め、入学試験に合格し、こうやってヴィレドコーリに出てくることにしたのは自分の意思だ。だがそこに至る経緯は、祖父とサネユキが自分とこの教授を引き合わせ、そして推薦も取り付けてくれたというものだ。
──……一体何に誇りを持てと言うのだろう。
そもそも王立学院大学の学生となることが、自分の誇りとなり得るのだろうか。
しかしそれは、この学院の教授であるグィノーに言うべきことではないのは理解している。思いを表情には表さず無表情を保ったまま、ハツキは「はい」とグィノーへ頷いておいた。
「チグサ君、君は臙脂のタイだと聞いたよ」
淹れたての香り高い珈琲を運んできたボードリエが、祖父と父親の前に珈琲を置き、ハツキの前にも丁寧な仕草でカップを置きながら、人懐こい笑顔で尋ねてきた。
その質問の意味が解らず、再度ハツキは首を傾げる。
グィノーの前にも珈琲のカップを置き、応接卓の真ん中にクリームと砂糖を用意して立ち上がると、ボードリエはまた笑った。
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