4.昼のうつつ 夜の『夢』

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「……それこそ、教授が私を推薦して下さったからではないのですか?」  ハツキの質問に、ボードリエの運んできた珈琲を飲みながら会話を聞いていたグィノーが、カップをソーサーに戻した。 「それが考え違いだ、チグサ君」  淡々としたグィノーの言葉に、首を傾げたままハツキは視線を教授へと向けた。  こちらを見つめる榛色の、(こわ)い意思を宿した瞳と目が合う。  ──ああ……    その視線に、この方は下手な誤魔化しなどはなさならない人物なのだと、自分が勝手に思い込んでいただけらしいグィノーに対する印象を改める。 「私は、たとえ国の重鎮であられるカザハヤ公から相談を受けたのであっても、君自身にこの学院に来るに相応しい能力があるのだと判断出来なければ、君を推薦することなど決してしなかっただろう。そして先程も言った通り、教授の推薦があるからとはいえ、入学考査の結果に加味もされなければ、試験問題が一般入試に比べて易しい訳でもない。私から推薦を受けたこと、試験に合格したこと、そしてその結果成績優秀者として遇されること、全ては君の実力だ」  それを聞いて、祖父が嬉しそうに頷く。
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