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よしんば、無事に学生生活の四年間を過ごすことが出来たとしても。
大学卒業後は、たとえその頃の立場がどのようなものであろうが、自分はベーヌに戻らなければならない。
自分の恩師になるだろうこの教授が期待するような将来は、決して自分には存在していないのだ。
──この方を騙しているようなものかもしれない。
おそらくその事情も、祖父からこの教授に伝えられているとは思うけれども。
「ハツキ」
珈琲を口にしながら考え込んでしまっていたハツキを祖父が呼んだ。
我に返って顔を上げ、目の前に座る祖父に視線を向ける。
祖父の横では、おそらくまた砂糖を沢山入れ、甘いに違いない珈琲を手にしながら、父親が困った顔で笑っているのも目に入った。
祖父は穏やかな顔でハツキを見つめてきていた。
「我々はまだ先生とお話をすることがあるが、おまえはこの後制服の仕立てにも行かなければならないだろう? 珈琲をいただいたら先に失礼させてもらいなさい」
「……はい」
仕立屋への付き添いのサネアキ達とは、適当な頃合いに大講堂の辺りで落ち合う約束をしている。
サネシゲに促されると、ハツキは程よく冷めた珈琲を飲んでカップをソーサーに戻し、ソファから立ち上がった。
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