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大講堂までの道すがら、構内でちらほらと見かける学生の制服を観察してみた。
ボードリエの言っていた通り、確かに殆どの学生は黒ずくめの恰好だったが、たまにベージュのウエストコートを着用している学生がいる。
四月から自分もベージュのウエストコートのあの恰好をすることになるが、その意味を知っても特に感慨はなかった。
ボードリエから話を聞かされたので、制服の色の違いがどんなものだろうかという興味は抱いたものの、実際に確認をしてしまうと興味はすぐに薄れてしまった。
そうなると、一人になったことで、つらつらと昨晩の夢のことが思い起こされてきた。
汽車の中では見なくて済んだ、物心ついた頃からずっと自分とサネユキの傍にある『夢』。
幼い頃から、たとえ家族であってもサネユキ以外の他人が近くにいると眠ることが出来なかった。
サネユキが高校進学のためヴィレドコーリに出てくる以前、ベーヌのチグサの家で一緒に生活をしていた時は、いつも彼がハツキと同じベッドで寝てくれた。
そうして彼と共に迎えてはいたものの、それでも夜になると訪れるその『夢』は幼いハツキにとって恐ろしいものだった。
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