4.昼のうつつ 夜の『夢』

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 恐怖のため、夜中に泣いて目覚める自分を何度彼が慰めてくれたことだろう。  ベーヌから彼がいなくなった後は一人で寝るようになった。  暗い部屋の中、独りでベッドに横たわり『夢』に落ち行く。  ベーヌで独りになってしまったあの頃は、眠りにつくことが本当に怖かった。  今でもサネユキ以外の他者が近くにいると眠ることが出来ないのは同じだ。  けれど度重なる経験から、その『夢』が自分に直接的に何かしらの危害を与えてくるのではないと判断出来るようになって、『夢』そのものに対する恐怖は減じた。  独りきりになってしまった頃には、『夢』から逃げようと眠ることすら忌避したものだ。  その経験によって、眠ることをしなければ身体が保たないことは身を以て知ったし、それによって取り返しのつかない出来事も引き起こした。  人の身に眠りは必要不可欠なものだ。  『夢』に対する恐怖も今や殆どない。  それでも、ハツキにとって眠ることは毎晩憂鬱だった。  彼のいる王都にやって来て、傍にサネユキがいるといっても、すでに成人を迎えた身で添い寝を頼む訳にはいかない。  あの『夢』は、自分達にとって直接的危害はないのだ。……おそらく。
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