4.昼のうつつ 夜の『夢』

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 『夢』の中ではいつも同じ風景だった。  全体的に明るく白っぽい、太陽の存在しない薄水色の空が頭上に広がり、足元には空が与える印象と同じような、生気ない淡い色をした丈の短い草が生える起伏に乏しい大地が全方位地平線まで続く。  そして、どこからか風の吹く大気は冷え冷えと寒い。  そんな場所に、昔はサネユキと二人、今は一人きりで訪れる。  その何もかも冷え切った草原の中には、ぽつりぽつりと人影があった。  それは老若男女様々な人達だったが、服装などの恰好はベーヌで一般的に見かけるようなものが多く、またその人々の特徴も彼らがベーヌの人間であることを示していた。  彼らはそこへ、頭頂部からそして足へと、まるで地面を抜け出してくるかのように地上から現れてくる。そして全身が現れるとすとんと地に足をつき、そこで意識らしきものを持つようだった。  しかし、彼らが実際にはどれだけの自意識を持っているのかはハツキにもサネユキにも解らない。  幼い頃のハツキは、サネユキが共にいた心強さもあって好奇心のままに彼らに近づき、声をかけてみたこともある。だが、彼らは一様に何も映さない虚ろな目をして、ハツキに応える者など誰一人としていなかった。  落胆するハツキの手を、そのたびに隣に立つサネユキはきゅっと握り締めてくれた。
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