4.昼のうつつ 夜の『夢』

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 昨晩その金の光を見つけて、ハツキはすぐに光の傍に近づいていき、それを観察してみた。  金の光の粒は確かに地面から現れている。  だがその場所には割れ目などがある訳ではなく、その光の粒子が出てきていること以外には他の場所とは何の違いもない、ただ貧相な草が生えるだけの大地だった。  自分とサネユキが『夢』では薄く発光していることは自覚していた。  だが自分達以外で光を纏っている者などいた試しがないし、自分達が纏うのもせいぜい月光のような淡いものだ。  まるで現実世界での真昼の太陽の光のような明るく温かい光を発するものなどなかった。  近くにいるとふわりと感じるその温かさを心地よく思ったこともあって、昨夜は目覚めるまでずっとその金の光の粒子の傍にいた。  その間も光の粒子は地面から漂い現れ、しばらくして空気の中に溶けるように消えていくだけだった。  サネユキもあの金の粒子を見たことがあるのだろうか。今朝は尋ねる時間がなかったが、彼に聞いてみたい。  そしてあれについて何か少しでも知っていることがあるのならば、教えて欲しい。  人々が足を向ける先、薄く青い影のようにしか見えない程遠くに、天を突くような高い山があるあの場所で。  あの『夢』に立った夜明けはいつも身体が冷たく重く、直接的危害はないといっても、確実にこの身から何かを奪っているあの場所だけれども。  再びあの金の光の粒子を見つけることが出来るだろうか。  今日もまたあそこへ行って、あの光を探したい。
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