4.昼のうつつ 夜の『夢』

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     ※ 「兄様!」  考えに没頭し、周囲も見ずに歩いていたらしい。  不意にすぐ傍から声をかけられた。  目を上げるともう大講堂の間近だった。  先にこちらに着いていたらしいサホがハツキを見つけて呼びかけてきたのだ。  ハツキを見つけて駆けてきたのだろう。サホの頬は軽く上気していた。 「無事にご挨拶はお済みになったの?」  尋ねてきた妹にハツキは微笑した。 「ああ。おまえの方は? 医学部はどうだった?」  ハツキが訊き返すと、サホもにこにこと笑いながら大講堂の向こうを指した。 「今日、見学に来ることが出来て本当に良かった。お外からぐるっと見て回っただけなんだけどね、大学病院も併設されていて、とても立派なところだったわ。ね、兄様、私も来年は絶対にここの学生になることが出来るよう、頑張るわね!」 「うん。お父さん達が言っていた通り、おまえだったらきっと大丈夫だよ」  そして、そう出来たら嬉しいのだけれどと思いながら付け足す。 「僕もおまえが来るのを、楽しみに待っているよ」 「任せておいて!」  兄妹の会話を横で聞いていたサネアキが笑い、ハツキとサホの肩に手を乗せた。 「それじゃあ、さっさと次の用事を済ませてしまおうか。仕立てが終わったら昼食に行こう。それからサホと俺の土産物物色だ」 「お食事は、もちろんアキ兄様のお勧めのお店なのよね?」 「当然だろう。楽しみにしておいてくれ」  ハツキも笑うと、三人で連れ立って正門へ歩き出した。
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