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010 終わりに
何が起きたのか、何を起こしたのか、自分でも全く分からない。誰が何と言ったのか、それがどういう意図なのか、どういう意見で、どういう見識で、どういう意識で、どういう感覚なのか。
まったく、分からない。
「……こんにちは」
あの後。
僕は、隣の部屋の子村さんを訪ねた。
「ああ、すみません」
横になっているというのは、本当に横になっているという意味だった。
「いや、大丈夫ならいいんだけど」
柔らかそうな布団から上半身だけ起こし、「それでどうでしたか」と尋ねた。僕は、すかさず「多分、大丈夫」と答えた。
この反応に不思議がりながらも、彼女は「そうですか」と納得してくれた。
帰り道。
世界はオレンジ色に輝いていた。
「ねえ、瀬川君」
そう言えば、彼女に名前で呼ばれたのは初めてだった。
「どうかしました?」
「もう少しラフでいいよ」
「……分かった。で、どうしたの?」
「……それだけ」
茜色の空に照らされた彼女の頬は、なんとなく赤くなっているように見えた。
その姿に、僕の顔も紅潮した。
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