「すき」の手前のもう一歩手前

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「わたし、永谷のこと、あんまり知らない。 友だちは里中と平沢で、数学が得意で……ってのは知ってるけど、 これからなんのバイトに行くかもわかんないし、家族は何人とか、なにするのが好きとか、全然知らないから……、 だから、知りたいと思った。 わたし、永谷ともっと話したい」 たどたどしかったけど、ちゃんと伝わっただろうか。 ちらっと視線を永谷の方へ向ける。 永谷の顔がまた赤い。そんなところを見てると、こっちもまた恥ずかしくなってくる。 また少し間があいて、彼は口を開いた。 「……ありがとう。それだけで、十分嬉しい。 たしかに、逆におれも、あんまり坂井のことわかってない。 おれも、坂井と話したいと思った」 わたしの言葉を引用して、彼は、まっすぐに言葉を投げかけてくる。 相づちを打とうとした瞬間、すこし語気を強めて、彼は付け加えた。
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