「すき」の手前のもう一歩手前

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……ちなみに、このやり取りをところどころクラスの他のやつに見られてて、そのあとクラスの公認カップルに仕立てあげられたのは……もう昔の話だから、いっか。 思い出したあのときが懐かしくなって、相変わらずとなりにいる彼のことを、思わず昔の呼び方で呼ぶ。 「ねぇ、永谷」 そんなわたしに、彼は怪訝そうな顔をした。 「……なに急に。てかきみも永谷でしょ」 「……まぁそうだけどっ!」 ちょっと恥ずかしい台詞も、十年もいればさらっと流すように言ってくる。 あのときのかわいさを恋しく思わなくもないけど、でもこれがわたしたちの軌跡なのかもしれない。 「ねー永谷ってばー」 「……なに?坂井」 わたしに根負けしたのか、彼は彼で、わたしを昔の呼び方で呼んだ。
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