「すき」の手前のもう一歩手前

6/14
前へ
/14ページ
次へ
「あのさ」 「なに?」 「……昨日のこと、忘れていいから」 「……え?」 思わず聞き返してしまったわたしとは対照的に、永谷は目を合わせずぽつぽつと話を続ける。 「迷惑だったろ?……ごめん」 そんな永谷の言葉に、少しの間言葉が出なくなってしまう。 迷惑。それは違う。 かといって、わたしが永谷のことをどう思っているかといっても、それは自分でもわかっていない。 わたしは少し考えて、永谷の方を見た。 「……昨日のやつ……本当?」 わたしの言葉に、永谷は少し目を泳がせて、それでもわたしの方に向き直った。 「……本当」 改めてそう言われると、ますますどうしていいかわからない。 そうこうしているうちに、永谷は言葉を続けた。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加