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ゆうなにもりんにも予想していたであろう痛みはおとずれなかった。
「なに、これ?草??もり??」
コンクリートがあるはずの地面は草に覆われ、都会の一等地にあったはずの高校は跡形もなく消えあたり一面木が生い茂っていた。
「、、、先にどいて!!」
「うわっ!ごめんっ!!」
想像してた痛みはなかったものの、ゆうなには凛の体重分の衝撃があったし、なんなら少しりんのひじが鳩尾に入って痛かった。
「ふぅー」
やっと人一人分の体重から解放されたゆうなは、深く息を吸い込んだ。
「てか、ここどこ??学校は??」
「…………」
「最悪、服にめっちゃ砂ついてんだけど!!」
「…………」
りんは現実逃避するかのように早口でまくしたてる。
「てか、あんたも何か話しなさいよっ!!」
「ごめん、びっくりし過ぎて、、、」
ゆうなは、深呼吸してからの数秒間完全に思考が停止していた。さっきまではりんが上にのっかていてそれどころではなかったが、改めて景色を確認するといつも見慣れた通学路にいたはずが今は木が生茂る森の中にいる。
「…………どこだろ?」
「……………」
次はりんが黙る番だった。
気がついたら、2人して全く見たこともない場所に立っているのだ。答えなどでてくるはずもない。
「……ケータイは?」
「!!!………圏外よ」
ゆうなの言葉にりんが慌ててポケットからスマートフォンを取り出すが、その画面には無情にも圏外の2文字。
ゆうな自身も自分のスマートフォンを確認するが、そこにもちゃんと圏外の文字が映し出されていた。
「とりあえず、歩くよ!」
「そうだね、誰か探して助けてもらわないと、、、」
ケータイも通じず、一度も見たことがない場所に来てしまった2人はとりあえずこのままではまずいと判断し人を探すためその場から離れることにした。
「あーもう、本当最悪!今日この後撮影なのにどうしろっていうのよ!!てか、マジでどこ?!階段から落ちて、こんなとこに来るなんてありえない!!」
「…………」
歩き出してから、りんはまくしたてるように金切り声で話し続けている。ゆうなが返事をしなくても特になにもないことから、独り言なのだろう。それにしてはいささか声のボリュームが大きかったが、ゆうな自身逆に話しかけられても困るので黙っていた。
ゆうなとりんは同じクラスではあるが特に接点があるというやわけではなかった。一年の頃は別のクラスだったし、2年になって同じクラスになりすでに3ヶ月は経過していたがお互いが話したのは今回が初めてだった。
しかし、小野寺りんは学校でも有名な生徒である。中学生の頃から人気ティーン雑誌のモデルとして活躍し、フォロワー数5万人越えの有名インスタグラマーでもある。ゆうなもそんな彼女のことを風の噂できく程度には知っていた。
一方の沢田ゆうなは容姿こそ綺麗だが、あまり社交的な性格ではなく部活動にも参加していないため学校でも友人の数はそこまで多くはない。なので、りんからすれば「言われてみればクラスにこんな子いたっけ?」程度の認識である。
今までの常識ではありえない出来事が現在進行形で自身の身に起きていることに加え、お互いによく知らない他人と2人きりでいる気まずさを感じながら、歩いても歩いても景色が全く変わらない森の中をただひたすら進んでいくしかなかった。
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