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この王子に任せていたら、セルフィアスさんを傷つけるはずだし、そしてそのことによってセルフィアスさんからのヘイト値を溜めることになってしまうだろうと思ったので、強制的に間に入った。
以前の私……クラウディアがどんな人間だったのかは分からないが、無理矢理謝ったことに少しだけ驚いていたので、多分謝らない人間だったんだろうと思った。
「ディア。君が謝る必要はなかったんだよ。この国にあるものは全て、ゆくゆくは王家の妃になる、君のものになるんだから」
……妃?いつの間にそんな大事に?まだこちらの世界に引っ越してきてから、1時間も経っていないのですが……。
「待っていてくれディア。あの忌々しい毒女との婚約を破棄する日まで。幸い、私の親友のロレンスとホフマンも、あの女の性悪さは良く知っている。すぐに婚約破棄できるよ」
さすがイケメン。流れるような動きで跪き、手を取ってくる。そして手の甲への親愛の証っぽい口づけだ。
イケメンにお姫様扱いされるなんて現世ではありえなかったので、ちょっと緊張する。でもこのイケメンからはそこはかとないクズ人間オーラがするので、素直に喜べない。婚約者がいるのに他の女にうつつを抜かして、暴言しか吐いてないって絶対にクズだ!
「まあ殿下……」
さすがに王子に向かって、このクズ野郎!そもそもお前のことなんて知らねえよ!なんて言うのはまずいと思ったので、適当にお茶を濁した発言になった。名前すら知らないから、役職名で呼んだし。
殿下が気に入らなかったのか、さっきのソフトタッチが嘘のように強く手を掴まれて引き寄せられた。
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