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大体の異世界転生が、不運な事故が起きてそれまで生きていた自分が死んでしまうところから始まる。 私の場合は、気がつけば自分が自分でない存在になっていた。 いや、明確な切り替わった記憶がないのだから、今ここにいる私こそがこれまで生きてきた私なのかもしれない。 だが、私には今の私じゃない私の記憶が、何と丸っと20年分存在するのだ。生きてきた歳月は28年なのだが、物心がついていなかったのか最初の8年の記憶なんて虫に喰われたように欠けている。 28歳の私は、比較的ホワイトだがお給料が寂しい職場で細々と某大手PCソフトメーカーのソフトを使って事務業務をこなす社員だった。 正確にはそのホワイトな職場の社員ではなく、そのホワイトな職場の子会社の社員で、臨時でアプリケーションを使える人を雇いたかったから短期異動させられたとかそういう訳の分からない会社事情があったようだが、まあどっちにしろお給料は変わらないし何でもいい。むしろ功績を見せつけて、ゆくゆくは親会社の社員になりたい……。 少しの残業はあれど、そんな労基スレスレの違法労働とかされてなくて、昨日だって15分残業して真っ直ぐ帰ったぐらいだ。 会社と実家の距離が絶妙に遠いという都合上、親元から離れて1人で暮らしており、その点については危ないと思う。だが、別に治安の悪い土地ではなく、危ない目に遭ったことはない。 せいぜいバイクを改造した兄ちゃんが、通常走るよりも多くのガソリンを消費して、パラリラパラリラ走ってるぐらいだ。 家に着いてからしたことと言えば、真っ先に風呂に入って冷凍チャーハンを食べ、洗濯を回す。そこから寝るまでの読書タイムだ。
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