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しかしそれらは、首都圏からやってきた記者たちの都会的な味覚にはさっぱり合わなかったようで、記者たちの口からは、「こんなものに鬼が食いつくとは考えにくい」「むしろあらかじめ鬼にアジャストされた味つけなのでは?」「主犯はお婆さん」といった心ない憶測が飛び交った。
桃太郎は誰もいなくなってから、会見場に打ち捨てられたきびだんごをひとつ、初めて頬張ってみた。お供の動物らと鬼一味にすべて配り尽くしてしまい、桃太郎はいまだお婆さんの特製きびだんごを口にしたことがなかったのである。
桃太郎にとってお婆さんのきびだんごは、ものすごく美味しかった。噂でしか聴いたことのない自らの不自然極まりない誕生シーンを思い描きながら、自分も人間ではないのかもしれないと思った。
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