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桃太郎謝罪会見
まさか鬼のツノからきびだんごが出てくるとは。
桃太郎はだだっ広い『ホテルニュー鬼ヶ島』の謝罪会見場で大量のフラッシュを一身に浴びながら、鬼の知能を高く見積もりすぎていたことを激しく後悔していた。あれがそこから出てくるのは必然であることに今さら気がついたのである。まさかでもなんでもない。
ちなみに『ホテルニュー鬼ヶ島』というのは、オーナーの元ヤンキー夫妻が「鬼ヶ島」という響きのいかつさに憧れてそう名づけただけであり、特に鬼ヶ島にあるわけでも鬼が経営にタッチしているわけでもない、本土にあるそこそこのホテルである。例によって、「ニュー」でない『ホテル鬼ヶ島』という名のホテルは存在しない。
鬼の好物がきびだんごであったのは、桃太郎にとってまったくの計算外だった。出立時にお婆さんから渡されたのは、そもそも桃太郎が食べる用のきびだんごであった。
それは特にお婆さんの得意料理というわけではなく、クックパッドで見つけたレシピに適当なアレンジを加えることで、初めて完成させた意欲作だった。それを犬猿キジに渡したらホイホイとついてきたので「これは!」と思い、お婆さんに追加発注したのがそもそもの間違いだった。
やはり鬼もしょせんは動物だったというわけだ。桃太郎を生んだあの巨大な桃フレームの中へ、お婆さんがたっぷりの愛情とともに詰め込み川に流して届けてくれた追加分のきびだんごを、遠征先の鬼ヶ島でスムーズにピックアップした桃太郎。そのきびだんごを手渡すと、鬼たちは驚くほど素直にやられ役を引き受けてくれたのであった。
つまり鬼を倒したのは、実質的にはお婆さんだということになる。
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