報酬

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「……わたしも、だよ。たぶん、雅也くんと初めて会ったときから、惹かれてた。だけど、友達って言われて、自分の気持ちをごまかすことに必死になって……」 「苺花……」 「雅也くんがなにを考えてるかはっきりとはわからなかったし、もう二度と触れ合えない関係にはなりたくなかったから、その」 「ごめん、おれがもっとはっきりした態度を取るべきだった」 「ううん、いいの。雅也くんのこと……教えてくれてありがとう」 わたしを抱きしめる腕を、軽く掴む。すると、ギュッと抱きしめる力が強くなった。背中から感じる体温と、わたしではない心臓の音が心地良い。 「……雅也くん、なんかあったかくて心地よくて、失恋したばっかりのわたしにはすごく癒される」 「失恋……したの? いつ?」 雅也くんの発言に、思わず振り返ってしまった。 「え、そんなに驚くこと?」 「だって、さっき彼氏と別れたばかりなんだよ」 「苺花はおれと両思いだったんだから、失恋したとすれば草太の方じゃないの」 ーーーうぅ、たしかに、それは一理ある。 「けど、そういうものなの!」 「ふーん。わがままなお姫さまなんだね」 「そうかも。それにわたし、雅也くんとは付き合うつもりもないよ」 「……は? え、ちょっと待って。なんでそうなるの」 「さっき言ったじゃん、彼氏と別れたばかりなんだよ。体裁気にするし、そんなすぐにほかのひととなんて付き合えないもん」 「なんだ、そういうことか……でも、却下」 「どうして」 「せっかくの両思いなんだから、今すぐでも付き合いたい」 「っ、」 雅也くんは、わたしの耳元でささやいた。彼のわたしを抱く腕は、よりいっそう強くなる。そんな言動に、今まで穏やかだった自分が、一気に緊張感に包まれた。
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