30人が本棚に入れています
本棚に追加
/44ページ
「……わたしも、だよ。たぶん、雅也くんと初めて会ったときから、惹かれてた。だけど、友達って言われて、自分の気持ちをごまかすことに必死になって……」
「苺花……」
「雅也くんがなにを考えてるかはっきりとはわからなかったし、もう二度と触れ合えない関係にはなりたくなかったから、その」
「ごめん、おれがもっとはっきりした態度を取るべきだった」
「ううん、いいの。雅也くんのこと……教えてくれてありがとう」
わたしを抱きしめる腕を、軽く掴む。すると、ギュッと抱きしめる力が強くなった。背中から感じる体温と、わたしではない心臓の音が心地良い。
「……雅也くん、なんかあったかくて心地よくて、失恋したばっかりのわたしにはすごく癒される」
「失恋……したの? いつ?」
雅也くんの発言に、思わず振り返ってしまった。
「え、そんなに驚くこと?」
「だって、さっき彼氏と別れたばかりなんだよ」
「苺花はおれと両思いだったんだから、失恋したとすれば草太の方じゃないの」
ーーーうぅ、たしかに、それは一理ある。
「けど、そういうものなの!」
「ふーん。わがままなお姫さまなんだね」
「そうかも。それにわたし、雅也くんとは付き合うつもりもないよ」
「……は? え、ちょっと待って。なんでそうなるの」
「さっき言ったじゃん、彼氏と別れたばかりなんだよ。体裁気にするし、そんなすぐにほかのひととなんて付き合えないもん」
「なんだ、そういうことか……でも、却下」
「どうして」
「せっかくの両思いなんだから、今すぐでも付き合いたい」
「っ、」
雅也くんは、わたしの耳元でささやいた。彼のわたしを抱く腕は、よりいっそう強くなる。そんな言動に、今まで穏やかだった自分が、一気に緊張感に包まれた。
最初のコメントを投稿しよう!