破廉恥

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破廉恥

草太は、中肉中背で、容姿も性格的にも中間。平凡な彼だけど、強いて長所を言うならその体格のわりにスポーツが得意なことくらい。 付き合ってみれば、彼のいいところも見えてきて、もっとすきになれると思っていた。 実際、彼のいいところは少し見えてきた気がする。今までわたしが見てきた彼の印象があまりよくないものだったから、余計にそう感じるのかもしれないけれど。 だからと言って、彼のことをすきになっているという実感はあまりなかった。 付き合ってから、正直なところ彼と毎日顔を合わせたいという気持ちになったことが今までないし、彼が自分をどう思っているかを考えて一喜一憂することもない。少女漫画などで見るような、胸が切なくなるなんていう気持ちになれるのは別次元の話だと思った。 そうは言っても、きらいになったわけじゃないから、特段別れる理由もない。 わたしと草太の関係を知っている同級生たちは、お似合いだと言う。ほのぼのしたカップルだと。 それもそのはずだろう。わたしたちは、手をつなぐ以上の、恋人たちがする行為はなにもしていないから。だ。 そのせいで、草太が不満に思っていることは知っていた。わたしはずっと知らないふりをしているけれど、キスも、その先も、草太と行為だよなと思ってしまうこと自体、わたしが彼の告白を簡単に受け入れてしまったことの罰なのだろうか。
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