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【ごめん、今日の放課後に委員会の集まりがあるの忘れてた……何時に終わるかわからないから、先に帰ってください。本当にごめん】
駅の待合室で待ちぼうけを食らっていると、草太からそういう内容のメッセージが送られてきて、簡単に振られた。
ーーーえぇ〜まじか。今日は珍しく、がっつり化粧してかわいくなってたのに……
草太のドタキャンは、今日が初めてではなかったけれど、ちょっとだけのデートをするつもりでいたから、ショックは大きかった。
このまま帰るのももったいないよなぁ、なんて考えていると、だれかに肩を叩かれる。
驚いて振り返ると、そこにはつい最近知り合いになったひとが立っていた。
「苺花じゃん、こんなとこでなにしてんの?」
「あ……雅也……くん」
彼は、わたしのすぐ近くに腰かけて、こちらを向く。ほぼ初対面のわたしを呼び捨てにすることや、あまりの距離の近さに座られることに、緊張せずにはいられなかった。
「……実は、これから草太とデートの予定だったんだけど、委員会の集まりがあるの忘れてたとかでドタキャンされちゃって」
「ああ、なるほど。なんていうか、今日の苺花、本気モードって感じだもんな」
「うう……なんかお恥ずかしい」
「いや、褒めてるんだよ。かわいい」
ーーーかわいいなんて彼氏ですらちゃんと言ってくれないし、そもそもこのくらいの変化には触れてすらくれないのに……
それに、だめだ……雅也くんの言動は、わたしには直球すぎる……
「……ありがとう」
「いいえ。苺花、せっかく気合い入れたのに、このまま帰るのはもったいないよな」
「そ、それはそうなんだけど……」
「じゃあさ、おれとしない?」
「え?」
「デート。草太には内緒な?」
このとき、なによりも自分に嫌気がさしたのは、草太に告白されたときとは比べ物にならないくらい、心臓の音がうるさかったことだ。
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