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上の階に行くと、音楽ゲームのコーナーの隣に、プリントシール機が数台置いてあった。
「あ、プリだ……」
「撮りたい?」
「え?」
「せっかくだし、ひとりで撮ってくれば?」
「え?」
「え?」
「……雅也くんって……かなり変わってるよね」
「それって、もしかして、褒めくれてる?」
「褒められてるように感じるなら、やっぱり天才かも」
「ははは。冗談だよ、行こう」
そう言って、雅也くんはプリントシール機の方へ歩いていくので、わたしも追いかける。
「草太と、撮ったことある?」
「あるけど……ふたりではないかな、中学の時に大人数ででしか。写真なら撮ってくれるんだけど、こういうの苦手らしくて」
「そうなんだ」
「雅也くんは? 彼女と撮ったりしたことある?」
「あるよ。……まぁ、彼女とじゃないけどね」
「ん? なんて言った?」
「ううん、なんでもない」
大人数ではない、男友達とふたりでの撮影に、なんだか不思議な感覚になった。
雅也くんはごく自然体だったけれど、わたしは最初のうちはぎこちなく、全体的に硬かった。でも撮るたびに、雅也くんが適当なことを言うから、だんだんほぐれていった。
ラスト2枚の撮影する背景を選んで、撮るまでの間、雅也くんがわたしの髪に手を伸ばす。
「ど、どうしたの」
わたしの問いかけに反応せず、そのまま触れ続けて顔を引き寄せた。
いや……正確には、彼が近づいてきたのかもしれない。
「んっ……」
ちゅ、と水っぽい音が狭い空間に響き、それと同時にフラッシュが放たれたのを感じた。
一瞬、なにが起きたかわからなかった。
けれど、わたしはそれがなにかわかっても、目の前の彼の首に腕を回し、角度を変えてまた唇を重ね合わせていた。
そうしてすぐに「らくがきブースに移動してね」というアナウンスが、この空間を刺すように響いた。
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