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24. 愛死天流
「てめぇ、何処のモンだ? 平凡クラスには手を出すなって聞いてねぇのかよ!?」
そう言って氷室君はもう片方の僕の腕を掴んだ。
「エラソー……お前こそなんだよ」
「……ッ」
灰鬼さんだと思う不良は、淡々とした声でつぶやくとペンを持つ手の甲で氷室君の手を叩きつけた。
その衝撃で氷室君の手が離れて、更に灰鬼さんは僕の腕を掴みあげるとペン先の蓋を口元で外す動作を視野に入ると、僕の肌に何かを力強く書いた。
「ああ…ッ」
ペンの先の強い圧力で僕は小さな悲鳴をあげた。
「ちゅーたッ!てめ、ナニするっ」
氷室君は腕を押さえて蹲った僕に近づくと、今度はヤチさんが脚で滑り込んで蹴り技でブロックする。でも氷室君はそれを軽く交わして少し後方へ移動した。
「つっかよー!!さっきからテメェ、この凡クラにナニこましてやがるんだよ、ア″ァコラ?」
ヤチさんは変装を解いて金髪の髪を見せた。もう不良だって知らせてる、黒チームの不良だって氷室君に気付かれたかもしれない。
「ひ…むろ君、僕は大丈夫、だから……それに……」この人は……この人達は。
「お前ら……つか、ちゅーた、どーゆうことだよ?」
僕の右腕に書かれた文字を改めて読み取って、僕も慌てたけど氷室君もその意味がわかったようで、眼球を見開いたまま固まっている。
「マジか?……おい」
「アンタの自己満の遊びで普通組のやつらをハーレムにするのは勝手だよ、けど、央汰の前には金輪際、寄るな」
灰鬼さんは、僕もろともこの場を立ち去る前に氷室君に向かってデスボイスで冷たく言い放った。
「つか、誰だよ……あの怖いべっぴん……」
氷室君が、彼が灰鬼さんだって気が付かなかったのは僕の知るところじゃなかった。たぶん、そのくらい普段の灰鬼さんの外見とは違うって証拠だ。
初めて見た、素顔の灰鬼さんに今迄の怖いイメージが薄れて、何故か授業があるのに促されるまま、僕は自然に足が向かって行った。
チラつく僕の右腕には『愛死天流』と書かれていた。
きっと意味は、あいしてるーーーーだと思う。
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