47. 照れくさいのは気のせい

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 八知さんはバイクで灰鬼さんの居場所――つまり僕の家を教えて着替えの制服(と、言ってもめちゃくちゃ派手な色のシャツだけど……)を届けに来たみたいで。  ばあちゃんが赤髪の八知さんにも驚いていたけど、「早朝から央ちゃんを迎えに来てくれたんだねぇ。それは遠かったでしょう、ありがたいねぇ」と言って何だかお礼を言ってる。 「めっさ遠い!凡クラが住む僻地ってマジで日本かよ!?」 「えっ……!」そ、そんなに遠かったかな……。 「馬鹿八知に構うな」  二人の会話に恐れをなしているのか、香奈ちゃんはまたばあちゃんの背後に隠れたけど、「ぐふ、コイガタキ?」と呟いてたの聞き洩らさなかったよ?なんなんだろ、もう……。  ところで気のせいか、灰鬼さんは僕に触れながらも香奈ちゃんに視線を送ってる……気がするのはお門違いかな。  ばあちゃんは僕の友達だと勘違いしてるようだけど……八知さんは僕たちの存在を無視して灰鬼さんに話しかけてるし、何の反応もないし違うって僕からも言い辛いから黙っていた。  灰鬼さんは食べ終わると丁寧に「ご馳走さま」と手を合わせた姿にばあちゃん以外吃驚していた。  なんだか……黒総長だったころのイメージが強すぎたせいか今の灰鬼さんは良い不良さんのように思えてならないよ。  だ、だから僕は……すんなり灰鬼さんの心にきっと信じることが出来て。  八知さんによってシマから届けられた服を着て、身なりはすっかり元の灰鬼さんになった。黒化粧はしてないけど爪は黒いまま。    八知さんが服が入っていた袋を取っていたら、中からはらり~と写真が落ちた。それを灰鬼さんが拾う。 「ああ、それな!灰鬼の服探してたら見つけてよ、めっちゃ懐かしくて持って来たぜ」 「……」 「中学んとき、シマで初期にツルんでた奴らだぜ、懐かしい奴も映ってるだろ?」 「八知」  灰鬼さんはその写真を片手で握り締めて八知さんに丸まったまま手渡した。 「勝手に持ってくんじゃねぇよ」  少しその場の雰囲気が不穏になったけど、ばあちゃんが八知さんに声を掛けて朝ごはんを進める。食べ物なら何でも好きそうな八知さんは「ケッ、田舎の料理かよ」とか言いながら座って口に頬張った。  僕は灰鬼さんに呼ばれるとちょっと抱き締められて、耳元で「早くしろ」と囁かれたので部屋から鞄を取りに行った。  ばあちゃんの空気を読まない感が功をなしたのか、なんだか居間の雰囲気は穏やかだった。  ー―これは後の話だけど、八知さんが『遠い、僻地、田舎、果ては日本じゃない発言』が、僕が通ってる高校までひどく距離があるように感じたばあちゃんが、学校の近くに部屋を借りて住めるように僕の両親に助言することになる。
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