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33. 喫茶店『ミランド』
有名らしいスーパーの激安店に行って来た。
思った以上に凄かった……潰されるかと思った……!
まるで運動会のような……もたついていたら置いていかれる焦燥に感じた。
タイムセールと、お一人様の商品があってどちらも人で溢れかえっていて、狭い店舗なので母さんが日頃使ってる裏技も使えなかった。
足の爪先も踏まれるし、持っていた商品も引っ張られるしもう二度と…いやいや!も、もっと力を入れて頑張らなくちゃって思った。
「いつも会うおばちゃんからも買って貰ってありがたいよ~」
見て見て!と、昂ちゃんのこのほこほこした笑顔。頬が艶々つるんだよ。
僕は頬がげっそりなのに……ただ、ちょっとおばさんの熱気に手の弾みかブレザーの腕が捲くれそうになって一番焦った。
腕に書かれた『愛死天流』って見られるのはなんか恥ずかしい。
昂ちゃんは背中にリュックをしょって、両手には4つのマイバックを持って軽く汗をかいていた。今日の勝利品だね。
アイスだけじゃ可哀そうだなって思って……ちょうどお腹も少し減ったので、アイスと登りのある小さな喫茶店に誘った。
「僕のおごりで」というと渋々の顔はパッと笑顔になった。
『ミランド』と書かれた看板の喫茶店に入ると、カランと涼し気な鈴の音が鳴った。
始めて入るお店だった。昂ちゃんも、もちろん初めて見たい。
コーヒーの芳醇な甘い香りが鼻に薫る。
カウンターの席と窓側に小さなテーブルと二人掛けのイス。僕たちはその場所に座った。
初めてなのでちょっとキョロっと店内を見て席に座ると、見たことのある人がカウンターの席に座っていた。
「あれ……あの人…?」名前は出て来ないけど、この前“シマ“で会った人だ。
僕と同じで不良に見えない人……帰り際にすれ違っただけなのだけどとても印象深く覚えてる。
だって、紫鬼さんのangelって呼ばれていた人だから。
「オレ、マンゴーアイス!んで、カレーいい?」
喫茶店のマスターの人がやって来て、昂ちゃんは早速メニューを見ながら注文をしていて、ふと僕に言い寄るのでそれに釣られて同じものを注文した。
そしてこの後、angelさんがこの辺に近い四ッ橋の高校生だと知るのはマスターが気を利かせてくれたおかげなんだけど、それよりももっと重大って言うのかな……。
まさか、今朝副校長が言っていた合同体育祭の相手校がangelさんが通う四ツ橋高校だと知って驚いた。
だ、だったらその高校は……紫鬼さんや不良軍団がいるんだよ!?
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