36. 目が覚めたら灰鬼さん

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36. 目が覚めたら灰鬼さん

「くっしゅっ!!」  鼻がもぞもぞして……『バチンッ』 「ぶあっ!?」  ん~…モフモフのような堅いもので叩かれた気がしたけど……。 『ナンで、マリなんて連れて来た?』 『出る時、寂しそうに見てるからさ。ドライブがてらイイじゃない…あ、起きたようだよ?』  僕はどうやら寝ていたようで……鼻の穴になんかの毛が入った感じもするし、ここは何処なんだろ……気のせいかな、ぼやぼやって灰鬼さんの声が聞こえーーー!!!!! 「起きた?」  幻のような灰鬼さんの声が耳に届いたと思ったら、パッチリ眼を開けると、僕の前に灰鬼さんの真顔が迫っていた。 「あ、わわわ……き、さんっ」  どうして、どうして? 灰鬼さん……? 「ナニその顔。央汰、理解してねぇの?」 「ぅあ……っ」  車窓から眩しく流れる外の光は、建物とすれ違う車のネオンでーー僕はいつの間にか車の中に居て、妙に存在感があるトラさんが助手席に座ってるのを発見して、座席から伸びてくるモフモフの堅いのは尻尾だったとわかった。  灰鬼さんは無表情のまま僕の顎を二本の指で抓んで、視線を無理やり合わせた。鼻が付きそうなくらいのド近距離……こ、こここここここわい。 「ハイキ、車中だからね。てかさ、その顔は怖いよー」 「ここで良い」 「なに言って」 「降ろせって」 指が離れたので、僕は咄嗟に灰鬼さんと逆向きになって車の窓からキレイな光を覗く振りをしていたら、突然、車が停まった。 「降りろ、央汰」 「え?」 「家に送り届けるんじゃなかったんだ?」 「……起きたから。俺が連れてく」 「はあ。あ、初めましてだね。おれはハイキの義理兄でトモヤっていうんだけど、「だからもう良いって」…状況わかる? お家には電話してちゃんと送って貰ってーー『バタンッ』 なんだか強引に僕の腕を引っ張って、車のドアも強引に閉めてしまった灰鬼さん。 「あの、お兄さんって……?」 ピンク色の髪をしていたけど、やっぱりヤンキーなのかな……。 灰鬼さんと二人、眩しい街の光の中に降りたんだけど……どうしてこんなところで降りてしまったんだろう。それに灰鬼さんのお兄さんが紫鬼さんの他にいたんだ。 ところで僕は……。 さっきまで薫君の家に居て、それで寝ちゃって……灰鬼さんがここに居るって事は、 えっと、は、灰鬼さんが寝てしまった僕を迎えに来てくれた……ってことなんだよね……!?  もしかしてお兄さんの車で迎えに来てくれたのな……と記憶を頼りに考えて、それじゃあ、ご挨拶もお礼もお兄さんや薫君にも言ってない! 「あ、あの、ごめ…僕……め、迷惑掛けて……っ」 僕じゃない僕が現れてた気もする……それも知られたのかな…。 「カオルに呼ばれたからってナンでアイツの家に行った?」 「は、はいっ?」 灰鬼さんは怒ってる……!?
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