41. 懐いていこうとする羊

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41. 懐いていこうとする羊

 まだバイクのスピードと振動に慣れなくて、灰鬼さんの腰に腕を回しているけどスピードが増すにつれて握ってる手にも力が入ってしまう。 怖いからなのかな、灰鬼さんの背中を見ていたら逞しいって思ってしまって……つい引き寄せられるように顔を近づけて、そっと頬側に触れた。  ヘルメットからだから……いいですよね?  灰鬼さんからの告白は、罰ゲームとかじゃなくて本気だと気づいても、  最初は怖いだけが支配してた。  冷酷無情だった不良の黒総長だから……その先入観によって怯えるしかない僕。  手錠のような鎖を首に付けられて逃げられないぞって脅かされているのかと思った。 『 この鎖を鍵以外で故意に壊したら、俺は容赦なくお前を殺す 』  そんな事を平気で言葉にして言う人……なのだけれど、考えて見ては怖いことを言うほど暴力や恐ろしいことをされたことがない。それより今まで灰鬼さんに言われたことや行動は優しいことばかりだった。 『央汰』  実は僕を呼ぶときの灰鬼さんのイントネーションが親に言われる呼び方の感じじゃなくて、な、なんていうのかな……くすぐったいような穏やかって言うのか、優しい……照れくさく感じることがある。  腕にマジックで書かれた文字に消すなって言って、全く思いがけないことをする灰鬼さんだけど、 『好きになって……いろいろ知って』  あ、あんな吸い込まれるような熱い感じで色気のある眼を見たことがないし……。  僕は男で……それにこんなビビりなのに強い不良さんが本気で好きになってくれてるってことなんだ。  さっきのときめいた気持ちは……僕だって嘘じゃない……。  本当の灰鬼さんはどんな人なんだろうって、知りたい僕は灰鬼さんに意識をしてるってこと……なのかな……。  いつしか海の香りを感じていながら、ずっとドキドキって心臓の波打つ音を感じていた。
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