44. 頭のてっぺんから内臓の奥まで発情してる

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 ガタンッ  今の音は、浴室に入ると風呂椅子につま先が突っかかって転倒しそうになったから。  透かさず傍に居た灰鬼さんが僕の腰を両手で掴んでグッと引くと、背後に当たった胸に肩もろとも収まってしまった。 「あ、ありがとう……です」  もうなんてドジなんだろう……自分のウチのお風呂なのに。  直後、離れようとしたけど動けないくらいにギュっと力強く腰に両腕を回されて抱き寄せられた。 「あ、あの……もう、大丈夫なので……っ」 「良くない」 「は、はい……」    僕のドジ加減にドン引きさせてしまったかもしれない。でも背後にいるからか灰鬼さんのが当って……タオルを巻いていてもお尻がむず痒いです。    灰鬼さんはシャワーのヘッドを持って僕の身体を流してくれてるし、髪まで洗ってくれてるけど、中身が一回分くらいしか入ってなかった事に気が付いていたのに……って事で灰鬼さんの洗髪が出来なくて申し訳なく思った。  湯船は以前じいちゃんが孫と悠々に入れるのが良いって、大きめのサイズなので灰鬼さんと入っても余裕があるんだけど……やっぱり僕の腰から手を緩めてくれない。  と、いうのも背後から抱きかかえられるような体勢で湯船に浸かっていて、それも灰鬼さんの胸に凭れてるので動くことも出来なくて、ちゃぷんと意味もなく指でお湯を波立せてしまう。 「……」 「あのー…、灰鬼さん、疲れないように少しぬるめですけど、お湯加減は気持ちいいですか?」  首だけを後ろに逸らしたら、耳元で灰鬼さんの熱い吐息が感じて落ち着かない。 「ん……頭のてっぺんから内臓の奥までーー」  黙ってしまったけど、怒らせることなくお湯加減も合格でよかった。 「タオル」 「えっと、タオルだけは巻いておくのは許してほしいんですけど……」 「……」  間が持たないよ……どうしたらいいのかな……。 「あ!しりとりしませんか?」 「あ?」 「駄目ですか?……長くならないようにしますからっ」 「楽しい?」 「しりとり楽しいですっ」 「ん。いいよ」  わわっ 灰鬼さんがやっと笑みを見せたので良かった! 「じゃ僕からで。うし、牛ですっ」 「心臓」 「うぐいす…!」 「膵臓」 う……?……ぅ。 「えっと…う……」うどんは“ん”ついちゃうから駄目で…えっと。  ーーひゃっ!?  あわわ、胸に手…変なとこ指で撫でられてる……気のせい??  まさか、早く言わないとこちょばし刑なのかな……っ 「う……牛」 「言った」 「うーうー……うまとび!!」 「び…脾臓」 「ひぞう??」 「ここだ」 「ひゃんっ!」  今度は左側の腰をこちょこちょと過敏に指で攻められた。  ……そしてまた、ウ……お、思いつかないーーでも、こちょばし刑は阻止したいよ。 「ぅ…ウインカー?」バイクが浮かんで……って思ってたら。 「肝臓」 「う″ーー…ぁッやぁ」
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