3.僕たちの、例えばなりそめかも知れない

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最強である紅チームの総長は、不良たちの憧れの存在になった。 普段はめんどくさがりでサボって寝てばかりだけど、それでも正義感が強くて頼れる善の不良さんだと、平凡組にも特別な不良として人気だ。 闘争に負けた黒チームの不良たちは退学するのかと思ったけど、理事長は許さなかったらしい。 だから今も黒チームの不良達は学校に成りを潜めて在学中だ。 全く成りを潜めていないのは、最恐で最凶と畏怖された冷徹で恐怖の象徴だった黒チームの総長。 散々痛めつけられた不良達は今までの恨みつらみを黒総長に浴びせるが、黒総長は顔色一つ変えずに私怨を受け止めていた。 グラウンドの土手で校長先生は腕を組んでその様子を眩しい顔で眺めていただけだった。それは僕たち平凡組も同じ……。 僕はそんな黒総長のストイックな姿……悪役なりに何故か胸打たれて自然に体が動いていた。 一方的に痛みつけられて傷を負っていた黒総長の傍に行って手当てを請け負った。 『あなたは逃げないで、皆の前に出てきたから……カッコいいと思います』 不良生徒にとって学校は戦場なんだろうから。 僕たち平凡組は、ただビビるだけで男として情けないって思ってはいた。 それが、最凶だったとしても負けた黒総長が逃げも隠れもしない、かと言って報復する事もなく全校生徒の前に出てきて、逆に自らに報復を促した。 あの頃の僕には、皆から恐れられた悪役不良だったとしてもカッコ良かったんだーー 黒チームの総長である、四谷灰鬼(よつや はいき)が。 そんな黒総長と僕が接点があるのは、あの時だけだったと思う。 まさか、僕に告白をしてくるなんて夢にも思わなかったけど……。
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