47. 照れくさいのは気のせい

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 香奈ちゃんが奇声のような悲鳴を押し殺した声を手で覆っている。僕だって今まさに悲鳴をあげたい……羞恥心的な。 「も、もう大丈夫ですから、灰鬼さんっ」 「そっちにもついてる」 「え?」  頬についていたマヨネーズも指で拭ったと思ったらそれも口に含んで舐めた。顎も持ち上げられた。灰鬼さん、なんだか朝から僕に触れてくる。  かかかか、顔が迫ってくる……こ、これってこの行為って! (香奈ちゃんがいるんだーー!!)  あわわわわ~と落ち着かなくなって香奈ちゃんの方に目線を向けたら、両手で顔を覆っているのを見て、僕は顔から湯気が出そうになった。 「朝ごはんだよ」と、ばあちゃんの声でちょっと正気を取り戻した。  それと作っていたサイドを灰鬼さんに渡そうとしたら、焼きシャケとみそ汁や青野菜のなんかの炒め物、それと卵焼きなどの素朴としか言いようのない和食の朝ごはんにロックオンしてジーっと見つめてる灰鬼さんに、ばあちゃんは座卓を進めていち早く座った。 (あれ?)  僕は勝手にばあちゃんの作った和食は口に合わないかと思っていただけで、灰鬼さんは無言だけども……無理なくキレイに食べてくれてる。なので僕が作ったサンドイッチは弁当になった。  まだ浴衣姿の灰鬼さんにばあちゃんがまたしても、今度は父さんのスーツを進めていた。  スーツはさすがに違うよと説明しようとしたら灰鬼さんが「仲間を呼んだから」とそれだけを言って白米をおかわりした。僕はいつもの和食に細々と食べていたけど、ばあちゃんは嬉しそうだった。  すると、玄関からドアを叩きつける音が聞こえた。何!?と慌てふためいていたら「なんだ開いてんじゃねぇーか」と声が聞こえて来て、どたどたと廊下を歩き居間に顔を出した不審者……だと思っていた人物はーー。 「遅い、八知」 「ちくしょー! ド田舎めっちゃ遠いっつーの!つかよ、指定時間の5分遅れだぜ? それにポリ(ミニパト)と追いかけっこして俺がもちろん巻かしてやったぜ」  ドヤ顔の八知さんだった。
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