48. はちみつ髪の恋人

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48. はちみつ髪の恋人

 いつも利用してるバス停前を通過した時、同じバスに乗る一個上の中山さんちの息子さんが僕に気が付いたのか目で追っていた。  変に思われたかな……けど学校も違うしそんなに話さないから特に気にしないでおこう……。  それよりも、当たり前の様に灰鬼さんのバイクに跨っているけれど、灰鬼さんに送って貰えるって事は……。 (えーと、えーと、この状況って……)  まるまってる僕の背後にはハンドルを握ってる灰鬼さんの両腕に支えられてる安心感からか、ギュっと両手を握ったのは思い出すことが多すぎて。  灰鬼さんがうちに泊まったこともそうだけど、朝は慌てふためくばかりで考えても見てもなくて、灰鬼さんと一緒に登校するなんてことは、これってもしかして重大な事で……それは僕の家から一緒に登校するってことで、誰にも見られてないかなって思う訳で……なんてこと!  あっあっ、でも僕の住む町からは五上轟(ごどろ)高校の生徒はいないから……灰鬼さんとのことは、きっと多分ーー 「飛ばしすぎか?」 「えっ?い、いいいいえ、 バ、バレるって心配はないって思ってますからーー!?」 「……」  つい、慌てすぎた反応に反省してバイクに乗っている間は静かにした。 ***  (お、驚いた!)  恒例の坂道をバイクで簡単に登りきると、五上轟高校の校門前には……どうして?八知さんがバイクに跨って喫煙しながら待っていた。 「おせぇじゃん」 ワ、ワープしたのかな、それともどこでもド〇…とか常備してるとしか思えないです。 「八知。お前、俺の視野から離れてろ」 「あ、ぁあ?」 「で、クラブハウスの鍵」  八知さんはポカンと口を開けて咥えていた煙草の……僕はあああっと思いながら落ちていく灰を見る事しか出来なかった。八知さん煙草は駄目だよ絶対……!って。い、言えたらいいんだけど。 「おまっ、灰鬼? それはねぇンじゃねーの? んなの聞けねぇんだけど、理由を言ってくれよ」 (あ、あああああっ)  唇を尖らせて顎をグッと上げると、灰鬼さんを威嚇するような目つきで睨みつけてる。  灰鬼さんも同じように無表情だけど八知さんの顔をすっごいガン見してる…ってより見つめ合ってる。  廊下でよく遭遇する仲の悪い不良たちの挨拶なんだけど、仲が悪いわけじゃないのに灰鬼さんはどうして八知さんに離れろって言うんだろう……。 「その顔、もっと変えろ」 「ああああ、上等じゃん!」 「だ、ダダダダダダメ!」  僕は険悪になってる二人の間に入って腕で制していた。  八知さんは怖い不良だけど、灰鬼さんにはとっても親切で慕ってると思うんだ。だから……。 「八知、いいの?」  ちょっと眉間を寄せた灰鬼さんが僕の方に顔を向けて、そう言った。  よくわからないけど「いいです」と答えてしまった。 「……八知も付いて来い」  そう言って灰鬼さんは先に校庭を抜けて東の方に今は使われていないクラブハウスに向かっているんだと分かった。  僕と八知さんは灰鬼さんの不思議な態度にクエスチョンマークを付けてると思ったけど、八知さんの顔を見たら何やらニヤついていた。  それから手に持っていた煙草を握り締めて「熱っ」って叫んだ。
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