48. はちみつ髪の恋人

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「俺はココで見張りしてりゃいんだろ、つか朝から盛ってんな…あサ、あ?そういやぁ何で灰鬼がこの凡クラの家なんかに居たんだよ?」 「央汰を送ったから」 「そっかよ。あのばーさんの田舎くせぇ葉っぱ料理なんつーか懐かしっつーか。そういやアオの奴、連絡付かねぇーんだよ」  あまり詳しく聞かれなくて良かった……えっと葉っぱ料理……な、なんだろう。でも文句を言わずに食べてくれて良かったのかな……。 「アオなら話が付いてる。見張りなんかいらねぇしお前も入れ馬鹿(ヤチ)」 「へ!お、俺もかよ…つかなぁ久しぶりだしよ。ちゃうわ!いくら久しいからってシェアの相手が凡クラはねぇーーーギャッ」  バタンとクラブハウスのドアが八知さんを挟んで閉じたので、八知さんは……痛そうだったけどドアに文句を言って蹴り上げて入って来た。  相変わらずの八知さんだけど、それにしてもなんの話をしていたのかな……八知さんも一緒にって事は灰鬼さんは何をするのか不安になってしまうけども……クラブハウスの部屋を見回すとそれなりに片付いていて、誰かが使用している感じもする。なんのクラブハウスだったのかなと思っていると八知さんが「まだ使ってんのな、この部屋。1年んとき3年を追い出して黒チームの根城にしてたっつーかなァ」  えええええ!!!!  それで灰鬼さんは勝手知ってるようにロッカーを無造作に開けると……。 「それ、制服かよ。ふっる」 「アオのだ」 「はぁ?んでどーすんだよ、そんなの」 「キる」 「killんのか!」 「制服は着るだろ。八知は……――コレつけろ」  灰鬼さんは五上轟高校の年季の入ったお古のような制服を手にして、八知さんには茶髪のサラサラなカツラを差し出した。 「ナニさせんだよ」って騒いでいたら「俺のツレなら、ソレをつけてろ」と言う灰鬼さん。  僕は、この状況に考えを巡らせて灰鬼さんのしたい事を思い描く。  も、もしかして灰鬼さんは……!  普段の灰鬼さんの学校での姿はTシャツにめっちゃ細くしてる改造のズボン。でも手に持ってる制服はヤンキークラスの生徒たちと似通ってる。  八知さんみたいに“転校生”を演出するなんてわけでもない。  まだ意味が不明な八知さんは唇を尖らせているけど、掌に置かれたサラサラな茶髪のカツラを頭に乗せた。薄い眉毛と一重で細い鋭い瞳は長めの前髪なので目元が少し隠れた。 「……」 「……」  なんとも声を発することが出来なかった。それは灰鬼さんも……。  それでも″八知さんの転校生バージョン″よりは少しは違和感が薄れるような気もした。
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