48. はちみつ髪の恋人

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 灰鬼はバシッと黒の学ランを背に広げると腕を通した。  爪の黒マニキュアも既に剥がしていて『黒チームの総長である灰鬼』を隠した。  身なりでは普通生徒ではないけど、悪役的な黒チームのイメージからは掛け離れている。  僕の見知っていた黒総長の灰鬼さんは、元はこめかみなどに剃りを入れた灰色の髪で黒い眼の化粧、口元は黒いマスク、黒爪。喧嘩も狂気じみていて一部の不良クラスの生徒すら目を合わせられない最凶の黒総長だった。  それなのに、僕と出会ってからの灰鬼さんはイメージそのものが異なってて……ビビるしか出来ない僕が怖がらないような雰囲気に変わって行くような気がしていた。  でもそうじゃなくて、灰鬼さんは黒総長のプライドを捨ててまで僕に寄せてくれてるんだ……。  はちみつ色の髪色が際立ってカッコ良くて、前髪を掻き上げればスッと流れる意志の強い瞳が晒されて、別の意味で目立つような容姿とその姿で視線を向けられて頭がぽわーっとして魅入ってしまった僕ーー。  トクンっと胸が高鳴った。 「うるせぇ奴らは黙らせる……絶対」 「は、灰鬼さん……?」  そう言えば、何をしようとするんだろう。 「そんじゃーよ、今度は五上轟高の不良クラス含めて全員を騙せばいいんだよな?へへッ」  八知さんはサラサラ茶髪がちょっとばかり雰囲気から浮いてる爽やかな不良さんに変身したようだったけど、はだけている首筋に生なましい蛇の模様のタトゥが目立っていたにはシールだったようで、簡単にはがせて良かったと僕が安堵した。 *** 「どうした、平山昂輝」 「んー、昨夜からちゅーたと連絡付かなんだよ、氷室知って…る訳ないかぁ」  うんうんと首を振りながら五上轟高校に向かう険しい坂道を一人登校中のところにバイクが停止するが、振り返ることもなく氷室と思っていた人物がメットを取った。 「おれは氷室じゃないけどな。誰と連絡とれないって?」  首をスマホから離して初めて声の主に振り向くと、見覚えのあるブリーチした銀髪強面眼鏡が微笑んで首を掲げていた。 「あれぇ、水沢……さん?」  昂輝は珍しいヒトだと思って目を瞠る。 「一人で寂しいじゃん。後ろ、乗ってく?」  少し考えてこのままだと遅刻だよなと思い、昂輝は「うん」と返事をすると、黒とシルバーのバイクにうんしょっと跨がり、バイクは轟音を轟かせながら駆けあがって行った。  彼は水沢幹斗(みずさわ みきと)、元銀チームの3年だが普段は学校をサボりがちの今はタダの不良――。
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