48. はちみつ髪の恋人

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 隣に並ぶ灰鬼さんが僕の左手を握りしめる。  いつものように引っ張られて歩くんじゃなくて、僕と同じ徒歩に合わせてくれている。  灰鬼さんがやっぱりなんか違う。真正面で見られると僕は目を逸らしてしまうのはなんだか、ま、眩しいから。  そんなこと、言えないけれど……。  クールにも見える読み取れない表情は変わらないけれど、柔らかな雰囲気に見えるはちみつ色の髪と普段は見ることが無かった学ランを着た姿だからなのかな。  雰囲気は不良クラスの生徒と変わらないのだけど、恐れられていた黒グループのボスにはまったく完全に見えなくなった。面倒見の勇ましい雰囲気を纏ってる氷室くんとも違うけど、んー…えっと、えっと……何となく今の灰鬼さんのような雰囲気の不良さんを見たことがある気もする。でも思い出せないから気のせいかな。  校舎前に戻って来て、そこで昂ちゃんを見つけた……っていうかバイクに乗っていて降りるところだった。片方の足がシート(サドル)に引っ掛かって降りるのちょっと危ない。そう思っていたらメットを被った不良が気が付いて昂ちゃんを抱えて降ろした。……良かったぁ。でも氷室くんのバイクじゃないから誰なのかな??  灰鬼さんは気に留めないでスタスタと昇降口に入って行く。僕は昂ちゃんを見ていたのでまたまた引きづられて進むことになった。 「あ。ちゅーた!?」  昂ちゃんが僕に気づいて背後で呼んだ!――のだけど、灰鬼さんはやっぱり気にせずに僕は昇降口に連れられて行くのでちょっと抵抗を試みて頭を出しながらも引っ込んだ。 「なぁ、あのパンダバイク銀じゃねぇの?」  八知さんは昂ちゃんが乗っていたバイクの不良を知っているようで灰鬼さんに伝えていたけど、それでも特に気にしている様子もなかった。  灰鬼さんってマイペースだ。 「つか、まだガッコ辞めてなかったのかよー」  ぼそっと八知さんが呟いていた。  僕は黒総長の灰鬼さんや八知さんと一緒に校舎に入っているのに、誰も灰鬼さんだと気が付かない……!!  殆ど学校内の不良は紅チーム傘下だから、すれ違うとバクバクと心臓の音が大きく鳴るのだけど、目線を上遣いで見上げるのは不良の挨拶のようなもので絡まれることは無い。  それは傍で八知さんが不良生徒がすれ違う度に舐め回すようにガンを飛ばしているからなのかな……。  パタパタと足音がしてずーーっと後方から再び昂ちゃんの声が響いて来た。 「ちゅーーーた!待ってーーっ」  今度はマイペースの灰鬼さんも気が付いたみたい。  で、でも僕は、ふと横の廊下から氷室くんの姿も捉えてしまっていた。
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