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49. スクランブル
「お、ちゅーた…」
ま、また氷室君とバッタリ会ってしまった。
「ちゅーた!!もー連絡しても繋がらないしさ良かった…ブッ!?」
昂ちゃんは今まさに飛び掛かるような勢いで近づいて来たんだけど、灰鬼さんの掌に昂ちゃんの顔がメキッって……!あわわわっ
昂ちゃんは不意打ちに反動でよろけると、背後で立っていた氷室くんの胸にポスンと収まった。
「愛死天琉……野郎」
氷室君は声色が低くなって唸るような声を出したので、灰鬼さんだとわかったのかとドキッとしていたら、恥ずかしい事を思い出されるような言葉を掛けた。腕を無意識に片方の手で握ってしまう。
「……」
「ん?え? そ、それ誰……ちゅーた?」
氷室君の胸から頭を上げて鼻を押さえながら昂ちゃんが振り向くと、僕の横にいる灰鬼さんに今、気が付いたようでキョトンとした表情を向けている。
昂ちゃんは知らないから……僕は言いそびれていたし。
本当の事は今は言っちゃったら大変なことになりそうで、それでなくとも灰鬼さんは変装のようなことをしてくれている。己惚れじゃなかったら僕を気遣ってくれてる……だから何て説明したらいいのか戸惑っていると……灰鬼さんの顔を覗いて見たら眉間を寄せていた。
やっぱり因縁の紅チーム総長の氷室君だから……と思ったら別の方向、昂ちゃんが走ってきた方角からゆっくり歩いていた不良と思わしき生徒だった。
もしかしてこの人は、さっき昂ちゃんと一緒に来た人なのかな……。
肩まである銀髪をサイドで結んでいて、細い黒眼鏡……穏やかな雰囲気だけど瞳は鋭い。氷室君よりずっと……。
「へぇ、珍しい組み合わせだね。暫く顔を出さなかったからか五上轟も平和になったもんだな」
「ちんたら歩いてんの誰かと思ったら、水沢サンかよ」
「氷室、目ぇ悪いのな」
えっと、って言うか、水沢ってもしかして紅チームに協力した銀チームのリーダーの人!?
「つかお前らやっぱりくっついたんだ?」
その人の視線は氷室君と昂ちゃんを捉えていた。
「あ?てめー ナ、ナニいってんだっ」
…………ええっ??
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