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「……家から出ないのか?」
思い詰めていたら、桐生さんに不思議そうに問い掛けられたため、私は慌てて首を横に振って駆け寄る。
「行きます……!」
「ああ。それじゃあ、行こうか」
私は桐生さんと一緒に外に出た。最初に思っていた通り、そこはマンションの一室のようで、下を覗き込むと、ここは1、2……5階だろうか?
横に並ぶ数々の扉に目をやると、そこには誰かが住んでいるらしく、傘や自転車などが置かれていた。
……壁を叩きながら大声を出して助けを呼んだのに、助けに来なかったのは、やっぱり留守だったから……なのだろうか?
疑問に思っていると、すぐ傍にいる桐生さんが口を開く。
「言っておくが、助けを求めても無駄だ。俺の部屋はちょっと特殊で……このマンションの管理人に許可をもらって、防音に改造してある」
「っ?!」
道理で、壁を叩いたり大声を出しても誰も助けに来ないわけだ。
それにしても、いくら管理人の許可がおりたからって、そう簡単にマンションの一室を防音になんて改造できない……よね、普通は。
ここのマンションの管理人の気前がいいのか……それとも、桐生さんとの仲が良いとか、桐生さんの両親と縁があって特別に……とか、かなぁ?
いくら考えたって分からないし、経由を聞いたところで私にはどうすることも出来ないので、追求はしないことにした。
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